TW2シルバーレイン【白夜・赤】【白夜・紅】のブログです。
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未だ淡く残る寒さの中
あるマンションの廊下を往く足音
がらんとした室内に、軽くチャイムの音が響く。
「はい…… …と…ルシアさま」
「おはようございます、紅さん。約束通りお手伝いに来ました。…少し早く着いちゃったかな?」
押し開いた扉の先で腕時計を気にする友人…ルシア・バークリー(リトルウィッシュ・b28515)へ、紅は心許した笑みを載せ挨拶を返した。
ルシアと共に引っ越しの手伝いを申し出てくれた彼女の義兄、テオ…テオドール・フォルクナー(白ム廃園・b16818)とも簡単な挨拶を交わすと、
紅はふたりを室内へと案内する。
「いいか!?暁!もっかいだ!!」
「ぇえ、赤先輩…何度やっても無理なものは無理ですって」
「大丈夫…俺とお前ならできるッ。そっち持て!ファイトおおお」
「い、いっぱあぁ…つってこの掛け声ホントに要りますか!?僕恥ずかし… あ、紅ちゃんお帰りー」
大小の段ボールが並ぶリビングの一角、玄関から戻った紅の姿に暁…梶浦・暁(焔の刀狼・b06293)が頬を緩め。
と、浮きかけていた電子ピアノの片側がドシンと落ちた。
「うわ重ッ!!」
「あ、先輩ごめんなさ…! …えっと、手伝いに来てくれるって言ってた…?」
「はい。ルシアさまと、テオさまですの」
既に早朝から手伝いに来ていた紅の恋人の暁と、兄である赤とも合流し
一同は本格的に『紅の引っ越し』の作業へと取り掛かった。
+
兄を残して彼女だけが引っ越すことになった経緯は、母の一言で始まった。
『紅ちゃん、中学校は家から近所の私立に通うでしょ? 中学生になっても赤と住むってのは大変だし…心配だから実家通いになさい?』
白夜兄妹の母ー…白夜・美登里(みどり)は紅に対して顕著に過保護。対して、兄である赤への信頼が薄く、又、それを隠そうともしない人である。
両親の仲が良く、互いに衝突を好まないため”家族仲が悪い”わけではなかったが
どことなく温度差のある親子、兄妹。
彼らの幼少の頃からの人生を見てきた母の見立ては決して的外れではないが、しかし…彼女には知らず、見えていないものが増えてきていた。
それは銀誓学園で僅かながらに変化してきた、子ども達の姿。
自分勝手で逃げ腰で、根性無しと思われていた兄は、妹の『意思』を助け護り、
従順で決断力に欠け、衝突を恐れる筈の妹は、泣きながら『意思』を貫いた。
結果、
『紅の恋人である暁君の御実家、剣道の家元である梶浦家の離れに住まわせて貰う』
という形で、紅の銀誓館通学継続について母からの許可が降りた。
中一の娘にそれはどうなの、という一般意見もありそうだが、基本的にロマンチスト揃いの白夜一家。
年齢など関係なく愛の力は偉大なのだそうで。
梶浦氏の御宅が広く紅1人増えたところで迷惑ではないとの事に、寛大なご家族ばかりというのも相まって、意外なほどすんなり丸く収まったのだった。
+
「しかし母さんあんな簡単に折れるとはな。紅のコトは相変わらず猫可愛がりっぱなしなんかと思ってたけど…っと」
飄々と言い荷を軽トラックに積むは赤。
「…まあ、赤や紅が変わったように、美登里さんも変わったってことじゃないかなあー…あ、それはもちょっと奥に載せてねー?」
それに間延びした応えと指示を返し運転席でエンジンをふかすは蒼井(あおい)…赤と紅の父である。
「あいよ。ってかまだエンジンかかんねぇの?いい加減車屋持ってったほーがいいって!」
「いやぁ、掛かりにくいのはいつものコトだからねぇ…」
「だから持ってけって!」
「今から持ってくのは大変だよ、赤」
「今スグの話じゃねぇって!んあ~も~」
白夜親子の噛み合わない会話に周囲は苦笑や茶々を挟みつつ、にそれぞれが体力に見あった荷をトラックに積み込み。
昼頃には部屋はほぼ空になり、トラックのエンジンも無事唸りを上げた。
「お昼休みを挟むかなって思ってたのですけど…みなさまのお陰で、ずいぶんとスムーズに進みましたの…ありがとう、ございます…♪」
「紅さんが小物は先にあらかたまとめていてくれましたからね。効率がよかったのかと」
トラックの荷を見上げては皆にお辞儀する紅に、笑みを返すルシア。
「それにまだ運びいれる作業があるもんね!まだまだ頑張るぞー…と、
うちに着けば、婆様がお昼を作ってくれてると思うので、良ければ皆さん召し上がっていって下さい!」
荷が滑り落ちぬよう、テオと共に紐をくくっていた暁の申し出を聞けば…
皆嬉しくない筈もなく、各々礼を述べ有り難く頂くことに。
蒼井運転のトラックは案内役に赤を助手席に載せ先に出発。
ほか4人は暁の案内で、バスで梶浦家へ。
到着するなり、如何にも”引っ越し!”といった風な手軽に食べやすいおにぎりと緑茶を頂くと、作業再開…荷を運び入れに向かう。
道場に隣接する日本家屋の母家。同じ敷地内、そこからほんの少し離れた家屋に紅の家具が運び込まれる。
入れるだけでなくレイアウトと荷ほどきまで手伝うと、陽は徐々に傾きはじめていた。
「おーしこんなもんか!おつかれさんだー!!」
赤の大声が作業の締めを示すように響く。
途中、蒼井は仕事の都合で荷を降ろすなり慌しく帰って行ったり、梶浦の皆さんが手伝ってくれたり、
赤がまた同じ足に荷を落とし痛がったり、まあまあ色々とありつつ…無事に、引っ越しは完了した。
ルシアが「終わったら皆さんで、と思って」と気を効かせ持ち寄ってくれたハーブティーと
蒼井が置いていったお茶請けの和菓子を囲んでの、和洋折衷模様な打ち上げ。
「おお、この茶美味しいな!」
「お口に合って良かったです。お父様方にも気に入って頂ければ良いですけど…」
「あー、母さんこーゆーの好きだから、多分今頃喜んで淹れてるよ…父さんが。」
「!」
ほのぼのとした赤とルシアの会話の横、ふとお茶から顔を上げる暁。
「ルシア先輩いつの間にお茶、白夜さんにも渡してたんだ!?…僕すっかり挨拶のタイミング逃してた、よね…うう…」
「ん…父さまが突発的に帰ってしまったのがいけないの。……
暁さまは是非また、落ち着いてお話できる機会に遊びにいらしてください、な?歓迎しますの…父も、母も。」
呟く隣で紅が微笑めば、暁もまた少し安堵したように微笑み返し。
二人はちゃぶ台の影で手を繋ぎ…暖かな雑談の輪は、結局夕暮れまで賑わっていた。
+
夕陽を背に、三々五々、解散していく。
お礼と挨拶を交わし各々家路につき…
赤は一人、目当てのバス停へと続く急坂を下っていた。
オレンジ色の木漏れ日の中思うのは、これまでのこと、これからのこと。
(とりあえず、紅が銀誓通い続けられて、良かった。)
(そもそもやっぱあいつはできたコドモだし、俺より先に能力にも目覚めてたんだ
…多分、俺なんかよりずっと「能力者」に向いている。…)
(…帰ったら俺も荷造りだな。明後日までにはまとめて、またトラック出して貰って寮に運んでもらう。
で、あそこ引き払う。…でいいんだっけ?確かカレンダーに書いたよな。後で確認確認)
自らの引っ越し作業と日付けを指折り数えるその背に、細長い影がぱたぱたと駆け寄り…追い付く。
「…兄さま」
「ん?」
振り返れば、ツインテールを揺らし立ち止まる、紅の姿。
「…んん? なんか忘れもんか?」
「いえ」
紅はかぶりを振ると暫し間を置き…
唐突に頭を下げた。
「短い間でしたが、色々とお世話になりました。
兄さまは相変わらず頼りないお人ですけれど、共同生活だからこそできたこと、助けられたこと、
知ることができたこと…多々あったように…今は思います。」
「!? な、なんだよ!改まって…」
「…思えばわたしは、長く…周りを見渡していなかったのかもしれません。
あの頃…゛神隠し゛に遭った頃、確かにわたしは幼くて…
…ひとつの考えしか浮かばなかったのは、今考えても仕方のないことです。
だから、あのとき貴方を嫌ったこと、貴方を避けて母と海外へ渡ったこと、今でも後悔などはしておりません。
わたしは正直に生きてきました。」
「……」
「ただ」
「いつまでも貴方の言葉に耳を傾けなかったこと… は… ……後悔しております。
先生の講義を聞き百科辞典を繰るより何倍も簡単なことのはずだったのに、
わたしはそれをやらなかった。」
「……やらなかったんじゃなくてできなかったんだろ?
…仕方ねぇよ。
…俺だってあんまちゃんと弁解しなかったし。仕方ねぇよ…
…お前なに考えてんだかわかんなくて、なんか…怖かったしよ…」
「……」
居心地悪そうに視線を迷わし考えながら言葉を絞る兄に、紅は苦笑の微笑みを向け。
「…同じことです。ぜんぶ、同じこと。わたしの視界に貴方が居なかったように、貴方の視界にもほんとの私は居なかったの。
だって私も、逃げていたから。…ちがう?」
「…どうだろうな?」
「わたしはそう思います。
…でも今は貴方を正面から見ることが、できます。できるようになったの。
…もう怖く、ないもの」
「… でもそれ、俺じゃなくて暁のお陰じゃね?」
「もちろんですが、それが何か?」
わざとらしくニコリと笑む紅を見れば、赤もつられて悪戯っぽく苦笑し。
「ふふ… …ねえ兄さま。年末のお鍋、楽しかった。」
「あー、楽しかったなあ。餅が全部くっついちゃってさあ!シラタキ巻き込んで新種の生き物みてぇくなってさあ!…ひひ」
「…ふふ」
暫し、押し殺した笑い声がふたつ木立に響く。
+
他愛のない会話がいくらか続き、一番星の見える頃。
「…っと、そろそろ帰らんと暁心配してんじゃね?」
「ん……」
小首を傾げ腕時計を覗いた後コクコクと縦に首を振ると
紅は登り坂の消失する先を見上げ、何かを思慮する表情になり。
「多分だけどね…兄さまと同じお家に住むこと、もう無い気がするの。」
「おう、俺もそう思うぞ?」
「…どうも、ありがとうございました。」
「……んーー
んー…じゃーまー……俺もまあありがとな。飯とかすげぇ旨かったわ。
……いい奥さんになれるコトは兄が補償しといてやる!!じゃ!!」
「!」
紅の視線が翻るのも待たず赤は軽い足取りで残りの坂を一気に下ると、
後ろ手にヒラヒラと手を振りながら、そのまま路地へと見えなくなった。
「…そ…そこまで先読みした意味で、言ったんじゃ…ないですの…!……」
人知れず呟き頬を染めると、振りそびれた手を背に回し、紅も再び踵を返し。
どこか嬉しそうなむくれ顔で、てくてくと坂を登り行き
その向こう側 暖かな光満ちる、新たな彼女の『場所』へと溶けるように姿を消した。
-----------
後記
はじめはほとんど後半部分の兄妹身内会話だけの予定でイメージしていたところ
嬉しいお声を沢山掛けて頂いて、こんな形になりました。することができました。
ただし3月を予定していたら4月になってしまいました。
自分に厳しくなすぎる。反省します。
お手伝いを申し出て下さった上、お名前と描写を快諾下さった梶浦・暁(b06293)さんと
そのPL様、ルシア・バークリー(b28515)さん、
テオドール・フォルクナー(b16818)さんとそのPL様、誠にありがとうございました!
折角の機会なので小説的・リプレイ(?)的になるよう心掛けたつもりですが、
丁寧に深く深く墓穴を掘っただけのような気がしてならないです。
至らない部分につきましては申し訳ございません…ご容赦下さい。
又、キャラを掴めていない部分がありましたら重ねてお詫び申し上げます。
※あまりに酷ければ勿論修正致します!仰って下さい。
それから、テオさんとはPC同士の直接の関わりがあまりないため描写に不安があり、
所謂依頼の「サポート」的扱いとさせて頂いてしまいました。味気なくて申し訳ないです…
ともあれお陰様で紅は無事引っ越しました!(ついでに赤も寮に移りました!)
これからの日々をまた白夜共々楽しみにしています。何か新しい事があるといい。
それでは
関わって下さった方、お読み下さった方、どうもありがとうございました。
K
----------
PR
Comment
引っ越しおつかれです
紅さん、赤さん、引っ越しおつかれさまでした。
(それから、Kさんは執筆おつかれさまです)
紅さんももう中学生。これから明るい前途ですね。
一つ屋根の下の暮らし、楽しんでください。まったくもう、私なんか簡単に追い抜いてくれちゃって。
従兄の扱いは、あんなモノでいいですよ。サポート扱いがぴったりです。
一点だけ。あれは、『従兄』であって、『義兄』じゃないです。普段、私も「兄さん」って呼んでるから紛らわしいんでしょうけどね。
まあ、紅さんたちから見たら兄妹に見えるってことで、無理に修正しなくていいですよ。
それでは改めて、貴女の先行きの幸いを、僭越ながらこの“細願”が念願させていただきます。
(それから、Kさんは執筆おつかれさまです)
紅さんももう中学生。これから明るい前途ですね。
一つ屋根の下の暮らし、楽しんでください。まったくもう、私なんか簡単に追い抜いてくれちゃって。
従兄の扱いは、あんなモノでいいですよ。サポート扱いがぴったりです。
一点だけ。あれは、『従兄』であって、『義兄』じゃないです。普段、私も「兄さん」って呼んでるから紛らわしいんでしょうけどね。
まあ、紅さんたちから見たら兄妹に見えるってことで、無理に修正しなくていいですよ。
それでは改めて、貴女の先行きの幸いを、僭越ながらこの“細願”が念願させていただきます。
Re:引っ越しおつかれです
ルシアさま、いらっしゃい、ませ…♪
お引越しのお手伝い、改めて、どうもありがとうございました、の…!
いえ…その…追い抜く、とか、そうゆうのではなくって…(ごにょごにょ)
…でも、えっと…はい。楽しい毎日になったら、いいなって、思います…♪
ルシアさまにも日々たくさんの、楽しいこと、が…訪れますよう。
それから、テオさまへの認識が謝っていて、ごめんなさい。
「おにいさま」って意識が強くなっちゃってた、みたい、です…
従兄さま。いとこさま。…Kにもしっかり、伝えておきます…の。
お手伝いのかんじに関しても、ご容認ありがとうございました。
テオさまにも、よろしくお伝えください、ませ…!
それでは…これにて。
今後とも、よろしくお願い致します、の…♪
お引越しのお手伝い、改めて、どうもありがとうございました、の…!
いえ…その…追い抜く、とか、そうゆうのではなくって…(ごにょごにょ)
…でも、えっと…はい。楽しい毎日になったら、いいなって、思います…♪
ルシアさまにも日々たくさんの、楽しいこと、が…訪れますよう。
それから、テオさまへの認識が謝っていて、ごめんなさい。
「おにいさま」って意識が強くなっちゃってた、みたい、です…
従兄さま。いとこさま。…Kにもしっかり、伝えておきます…の。
お手伝いのかんじに関しても、ご容認ありがとうございました。
テオさまにも、よろしくお伝えください、ませ…!
それでは…これにて。
今後とも、よろしくお願い致します、の…♪
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プロフィール
HN:
白夜・赤(しらや・せき) 白夜・紅(しらや・べに)
HP:
性別:
非公開
職業:
赤:火狐本業 紅:ヘリオン本業
趣味:
赤:音楽(ロック)と読書(漫画)とまったりすることー 紅:音楽(クラシック)と読書(小説)とお散歩、ですの。
自己紹介:
白夜・赤(しらや・せき)---------銀誓館学園・綿津羽キャンパス高校3年。熱いがユルい奴。大好きな皆と笑い合えるのが何よりも好き。
白夜・紅(しらや・べに)---------銀誓館学園・鹿苑寺キャンパス中学1年。礼儀と優雅を重んじる。「知り学び続けること」が信条。
背後:K…★の人
※このブログには銀誓学園での出来事を中心に、そのほか学園生活には無関係な舞台裏的な出来事も記述されています。
故にある種のアンオフィシャル要素が含まれていると言えなくもありません。
お嫌いな方はご覧になられませんようご注意下さいませ。
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このブログに掲載されている諸作品は、株式会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
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白夜・紅(しらや・べに)---------銀誓館学園・鹿苑寺キャンパス中学1年。礼儀と優雅を重んじる。「知り学び続けること」が信条。
背後:K…★の人
※このブログには銀誓学園での出来事を中心に、そのほか学園生活には無関係な舞台裏的な出来事も記述されています。
故にある種のアンオフィシャル要素が含まれていると言えなくもありません。
お嫌いな方はご覧になられませんようご注意下さいませ。
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