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TW2シルバーレイン【白夜・赤】【白夜・紅】のブログです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ↑の説明がよくわからないよ!という方にはおすすめできません。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆リンクフリー◆コメントもどうぞご自由に◆ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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紅の部屋

ワインレッドの布団が敷かれたベッドに腰掛け
電話の子機を片手にした、紅。

その斜め向かい辺り
小さなティーテーブルに向かい胡坐をかき
柿の種をぽしぽしとかじっている、赤。







「兄さま…聴いてるおつもり、ですか」
「おつもりデスよ。別に口出ししねぇし、いいだろ。聴いとく権利はあるだろ」
「…まあ、良いですけれど」

ぽしぽしと柿の種が割られる音が響く。


この夏
実家に一時帰宅した白夜兄妹は、親族に色々と『これから』を問われた。
質問の主は、主に母親。

赤は進路をどうするの。
紅は中学どうするの。
前から言ってた私立中学校で、いいかしら?
今通ってるそこは小中高一環だというけれど
やっぱりお母さんは実家から通えるところがいいと思うの。
ねえ、赤もそう思うでしょう。
っていうかあんたは彼女できたとかウソつくんじゃありません!

といった具合だ。

幼い頃からやんちゃで破天荒
敗れるルールはとりあえず
ひととおり全て破ってきた赤への母からの信頼は薄く、

対して従順で物覚えの良い紅は
彼女の能力が開花したきっかけでもありトラウマでもある
『神隠し』事件で精神的な傷を負って以来
過保護に過保護に育てられ、海外出張にまでも全てつれて行かれ、
望むものは全て望んだ以上に与えられ
そうして、「育て」られてきた。


(でもわたしは、もうそういう『檻』を必要として、いないのです)


問われた兄妹は答えた。
『そう先のことはまだわからない』
そう先というほど先ではない と、母は答えた。
そして、
『とりあえず、紅ちゃんが中学生になるのに二人一緒の家には住んではいられないでしょう。
だからといって中学生の女の子の1人暮らしなんて、危なくてたまんないのよ。わかるでしょ?
とにかく紅ちゃんは一回帰ってきなさい。で、中学受験受けなさいな。
紅ちゃんは受験勉強なんかしなくても、推薦で入れちゃうでしょ?
赤も今の家から引っ越すんなら、お母さん、探すのとか協力したげるから。ね?』
それがいいわ

言われて、紅は


「おまえさあ、なんであんときちゃんと否定しなかったワケ」
「……できなかったん、ですもの。…お母様に、悪くて…」
「…俺が何言ってもあの人聞く耳持たないの知ってんだろ?だからおまえが…
…いいや。とにかく、電話しちまえよ。
折角の暁ん家のご好意だ、無駄にしたらメッ!だからな」
「……何ですかその”め”って誰の真似…」
「い いいからちゃんと早く電話すんの!ほれ早く」

赤に急かされ、紅は握った子機に押しなれた実家の番号を入力する。

赤の言う”暁ん家のご好意”とは
即ち紅の”彼氏さん”である梶浦暁氏、そのご家庭
梶浦家の、お屋敷の
離れの空き家を、紅が借家として借り住まわせてもらえる、というもの。
以前『うちには離れの空き家がある』と暁が言っていたことを紅は覚えており
先日そこを自分が借りられないかと尋ね、有難いことに了承を得られたのだった。

それを、母に伝えなければ。
伝えて、認めてもらわなければ。




ぷるるるる
ぷるるるる
がちょ



『……  はい。もしもし』
「もしもし? …お父様ですか?」

『…あー!紅か!そうだよ。元気だよ。元気か?赤も元気かい?』
「はい、元気です。お父様もお元気で何よりです。…んと、お母様は?」

『いるよ!丁度この間大坂から帰って来てねぇ。
ちょっとまってな。  おおーい美登利さん紅がぁ……』

…ぱたぱた …メキョがさがさ

『はいッ!今かわったわよ。 紅ちゃん!!??』
「そうです。お久しぶりです、お母様。今めきょって言いましたけどお父様はご健勝ですか?」

『ちょっと腕があたっちゃったけど、大丈夫よ!そこらで寝てるわ。
それより、紅ちゃんから電話をくれるなんて珍しいわねえ。どうかしたの?赤が捕まった?』
「いえ。兄さまのルール違反は昨今では非常識な髪色くらいのものですから…」
『そうなの?深夜の学校のプールで勝手に泳いで先生方に手間取らせたりももうしてない?』
「はい。紅の耳には兄さまのそういう類の噂は届いておりませんの」


ぱしぽしと、柿の種の音。
(…何の話してんだ何の。俺のことはほっとけよ…過ぎたことを蒸し返すな…!)
バツの悪い赤面を紛らわすように袋を持ち上げ
ザラザラと流し込んだ柿の種が、続いてばりばりばり と。


『そう。まあ、良かったけど… それじゃあ何、かしら?』
「はい。あの…
先日…お盆のときにお話したこと、なのですけれど……」
『なあに?…やっぱり、入試は不安?』
「…いえ。そういうわけじゃ…ないの。あ あのね母さま…
紅… わ…わたしね、銀誓学園、がすき なの。だから、」
『…だからぁ』

『1人暮らしはダメって、言ったでしょう。寮なんて野蛮なところも認めませんからね、お母さんは。
そんなの、紅ちゃんに、ふさわしくないもの…』

ああ、まただ。
おかあさまの声は、たまに酷く冷たく硬く、わたしの耳に響く。
わたしはおかあさまがとてもすきだし、沢山の恩を、感じているのに。
だのに。

『だから、ね。とりあえず帰っておいで。
紅ちゃんが帰ってくるなら、私も出張は控えられるように上に掛け合ってみるから。お弁当、作ってあげたいもの…!』
「あ あのね かあさま」
『そう。あそこの中学ね、制服がものっっすごくかわいいの!楽しみだわあ。
ああ、あと制服でいうなら、もう一箇所あるのよ。セーラー服の…』
「か あさま……!」

ああ
だめだ
泣いてしまう
わたしは
まだこんなに子どもで
こんなところで固まって、
なんでだろう
わたしは
わたしがなにがすきで何をしたいのかは
わかってるのに わか ってるのに いうだけなのに
いうだけ
いうだけ
つたえなければ つたわらないの。
知ってるわ しってるのに

しってるのに





「知った口利いてんじゃねえぞコラ」

(…  あ れ)

紅がふと気付いたときには、ぼやける視界の先、自分の手の中に子機はなく
それは赤の手に握られていた。
部屋の電気の真下に、天井を扇ぎ気味に立つ兄
その表情は、ベッドに座っている紅からは、見上げても、見えない。

「何黙ってンだよ何トカ言えよ。知った口利いてんじゃねえっつってんだよ」
『……赤?いたの?』
「いたよ。父ちゃんが送ってくれた柿の種食ってたよ。」
『…じゃあなんであんたが紅ちゃんの電話横取ってんのよ』
「柿の種食い終わったからだよ。文句があるなら柿の種に言え」
『なに馬鹿いってんの… かわって。紅ちゃんに変わりなさい。』

「駄目。紅今泣いてる。母さんが泣かした。」
『…泣いてるの?』
(…?わた し…泣いてるの…?)
「泣いてる。だから俺がかわりに言う。

紅は銀誓学園が好きだって。楽しいって。
だからこれからもずっと、ずっとずっと通ってたいって。

それに、銀誓学園には好きなヤツがいるって。
そいつは俺の親友で、人望も厚く責任感のある
俺なんかとはまるで釣り合わない、剣道のお家の長男でよ。

そいつの家がよ、離れが空いてるっていうから
紅に部屋を、貸してくれるってさ。
割と閑静で勉強もできるだろうし、古くはあっても快適だろうって。
学校も近いし、そいつん家の家族の方々も歓迎してくれるっつーから
俺と住むより寮より何より安全だろうって。

…… そうさせてやれよ。
俺のことはいいから。どうでもいいから。
今までどおりほっといてくれんのが俺的に一番有難いから。

だからさあ、せめて、
紅のことを理解しようとしないのとか
自分の都合いい方向に投げ出すのとか、そういうの、やめてくれよな。
…紅は
…あんたの人形じゃあ、ねえだろう。」






『赤』
「なんよ」
『…… あなた、それ嘘      』     
                              ガッ




通話は、子機が床に叩きつけられる音と共に、強制的に途切れた。

依然、紅からは兄の表情は、見えない。が、
(……兄さま、怒ってる。)
多分、わたしのためと
自分の情けなさ、に…


「……ああぁあぁー、相変わらず信用ねえのなあ!俺ッ!…ナンかいっぱい喋ったら疲れたわ。寝る。」
「あ…あの。お風呂、は…」
「めんどくせええー。明日朝シャンすんよ…今日はもう寝る。
なんかごめんなあ。口出さねっつったのに。
逆に信憑性無くなくなっちゃったかわからんケド、あとは紅が話つけてくれな? じゃ。」
「あ…… お おやすみ、なさい。」
「おう。 やすみー。」

食べかけの柿の種の袋をガサと掴むと
兄の背は一度も振り返らないまま、アコーディオンカーテンの向こうへと消えていった。



暫しの静寂。


と、



ぷるるるる
ぷるるるる
………

(鳴ってる… お母様。)

放心したまま、半ば条件反射のように、床の子機を拾い上げる。


「…はい」
『……紅ちゃん?…泣いてる?』
「…いえ  ……いえ、さっき、すこしだけ。でも、今は泣いて、ません」

『……ごめんね?』
「……いえ。……あの。おかあさま。

謝るなら、兄さまに謝って…謝って下さい。う、
嘘、じゃないです。今兄さまが言ったのはうそ じゃない、です
わ わたしは   ごめんなさい。ごめんなさい。わ
わたしがいいたい のは…」

『…ごめんね。うん。……泣かないで。ね。おかあさん、聴いてるから。
紅ちゃんが言いたいことなら、何でも聴いてあげるから。
…今じゃないほうがいい?また、にする?落ち着いて話せるときに。』
「…… ……ん…」
『……
嘘だ、なんて思ってないわよ?
赤は大抵、バツの悪いことした時でもなけりゃ、馬鹿正直じゃない。
…さっきはね、”あんた、それ嘘みたく上手くできた話ねえ。ほんと!?”って言おうとしたのよ。
…本当よ?』
「……」

ああ

『紅ちゃん、好きな人がいるの?』
「……うん」
『そうなの…!よかったわねえー。紅ちゃんが見込むんだから、素敵な人なんでしょ?』
「…うん」
『なんでお母さんにすぐ知らせてくれなかったの?恥ずかしかった?』
「…うん。」
『そうなの!ウフフ可愛いんだからー。お母さん恋の応援とか大好きなのに!』
「うん… あ あのねお母様…兄さまも嘘ついて、ないのよ?あの…」
『アハハ 知ってるわよう。赤だっていつまでもがきんちょじゃないでしょ?』
「……うん。そう…みたい…。ですの。」

ああ

なんで
なんでかな
悲しい じゃないし
嬉しい とも違う 気がする のだけど…

『…あら…紅ちゃん、また泣いてる?』
「……ぃてない… です…」
『アハハ 泣いてるわよう。…ね、もう、今日はお風呂入って、寝なさい。
私当分出張ないから、家か会社に居るわ。いつでも、電話、ちょうだい?』

「……します。電話、します。
……こ んどは…わ
わたしが言うんだもん…! ちゃ んと…言うんだ…からぁ……~!」

『わ わかった、わかった!そう泣かなくてもいいのよ。
紅ちゃん、きいてる?聴こえてる??あははは…』







(…なんかわからんが、なんとなく…イヤな泣き方じゃないっぽいな。上手く行ったか…)
(……よし。寝よ。)

赤の部屋のデスクランプが消え

夜の帳は
今宵も静かに、月の上に幕を下ろす。








+++

Special Thanks:梶浦・暁(b06293)さんとその背後さん
お名前と会話から発生したネタでのSS描写許可と
ブログへの掲載許可有難うございました!多謝。

BY:K
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白夜・赤(しらや・せき)       白夜・紅(しらや・べに)
性別:
非公開
職業:
赤:火狐本業         紅:ヘリオン本業
趣味:
赤:音楽(ロック)と読書(漫画)とまったりすることー   紅:音楽(クラシック)と読書(小説)とお散歩、ですの。
自己紹介:
白夜・赤(しらや・せき)---------銀誓館学園・綿津羽キャンパス高校3年。熱いがユルい奴。大好きな皆と笑い合えるのが何よりも好き。

白夜・紅(しらや・べに)---------銀誓館学園・鹿苑寺キャンパス中学1年。礼儀と優雅を重んじる。「知り学び続けること」が信条。


背後:K…★の人

※このブログには銀誓学園での出来事を中心に、そのほか学園生活には無関係な舞台裏的な出来事も記述されています。
故にある種のアンオフィシャル要素が含まれていると言えなくもありません。
お嫌いな方はご覧になられませんようご注意下さいませ。

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